宇野昌磨選手に学ぶ3つのとらわれない心

日本中がたくさんの感動をもらった平昌オリンピックも今日2月25日で幕を閉じます。私としては、一流のスポーツ選手が最高のパフォーマンスを出すときにどんなメンタルでいるのかという点でも多くのことを学ぶ機会となりました。
なかでもそのメンタルの強さに驚いた選手が、フィギュアスケートで銀メダルを獲得した宇野昌磨選手でした。彼はインタビューで次のように話しています。
Q「羽生選手のあと最終滑走でしたが、どんな気持ちでフリーの演技に臨みましたか?」
A「全員の演技を見ていて、自分がどんな演技をすれば何点が出て、何位になるかが分かっていましたが、冒頭のジャンプの4回転ループを失敗した時点で、羽生選手にはとうてい及ばないってことが演技中に頭をよぎって、すごく笑えてきてしまって。そのあとはもう自分の演技をしようと思いました。」(※1)
初めてのオリンピックでの競技中に「笑えてきた」という言葉に、私は大きな衝撃を受けました。そこで、宇野選手の他のインタビューも見ながら、銀メダルの演技を支えたメンタルの状態を分析しました。そこには、3つの「とらわれない」ポイントがありましたのでまとめたいと思います。
1「他の選手の演技」にとらわれない
宇野選手の言葉で私が最も驚いたのは、自分の演技が始まる前、他の選手全員の演技を見ていたことです。ライバルが最高の得点を出す、あるいは期待されていた選手が転倒を繰り返すといった光景を目の当たりにしたら、私だったら心がざわついて自分の演技に集中できないでしょう。他の選手の演技に気を取られないよう、最初から見ないという選択をとると思います。また実際、そうしている選手も多いそうです。
しかし宇野選手は、「全員の演技を見ていて、自分がどんな演技をすれば何点が出て、何位になるかが分かっていました」という言葉にもあるように、全員の演技を見て、冷静に点数の計算をしていたのです。これは、他の選手の演技の出来栄えが、自分のそれとは実際には関係がないという考え方が徹底されていることの証といえます。
私たちは普段、自分と似た立場にある人がいい結果を残すと、つい嫉妬を覚えることもあると思います。しかし、その人が良い結果を残すのと、自分が良い結果を残すのとは実際関係がないですよね。それどころか、嫉妬するとその気分が自分の心を乱し、自分のパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまいます。他のプレイヤーがどうであるかを気にするのではなく、自分のプレイに集中するということが求められるのです。
宇野選手も最初のジャンプを失敗してから、「自分の演技をしよう」と切り替えられたと話しています。「とらわれてはいけない」と考えるのでもなく、他者のプレイにとらわれている自分にまずは気が付くということが重要です。
2「結果」にとらわれない
「誰にメダルを見せたいか」と聞かれ、「誰にも別に見せたくないです」(※2)。「日本に帰ったら、そのメダルを誰にかけてあげたい?」と聞かれると、「『かけたい人がいればかければいいかな』って思います」(※3)。
銀メダルをとった後の宇野選手の受け答えから、私たちが「オリンピックという大舞台や、オリンピックで結果を残した証であるメダルに対しては特別な思いがあるはずだ」という前提を持っていることに気づかされた思いがします。
対する宇野選手は「『五輪だから』ではなく、どんな試合でも練習してきたことを出し切りたい」(※4)と一貫して話していました。宇野選手が「結果」ではなく、「実力を発揮できる自分」に対して常に意識を持っていることがうかがえます。
「結果」は言葉通り「結果」です。原因があって結果があります。思うような結果を出すためには、原因の部分しかコントロールすることはできず、その結果が表れているだけです。
言葉にすると当たり前のように聞こえますが、本来直接コントロールできないはずの結果をコントロールしようと、ムダなエネルギーを消耗したり、結果に翻弄されたりしてしまうことは日常にも多いと思います。「~できるかな」ではなく、「~できる自分とはどんな自分か」という問いを立ててみましょう。
3「緊張しない」にとらわれない
「初めてのオリンピック、やるべきことはできましたか?」というインタビューでの質問に対し、宇野選手は
「初めてのオリンピックだからといって「緊張しないように」とか、「何かをしないように」ということを何も考えないで、感じたものを何も拒まず、緊張したら緊張したままやろうと思っていたんですけど、最後まで何も特別な思いはなかったです。」(※5)
と答えています。
つい「緊張しないように」と考えてしまいがちですが、そう考えると「緊張している自分」が意識されてさらに緊張感が高まります。緊張している自分に気づき、そのまま受け入れる。これができるためには普段からこうした意識を訓練しておく必要があるでしょう。もしかしたら、そもそもそれ以前に「自分の心がいまどういう状態にあるのか」ということを言葉にする訓練が必要かもしれません。
緊張だけでなく、不安や怒りといったネガティブな感情にも同じことがいえますが、「~と感じている自分」を受け入れるためには、「~と感じている自分」にまずは気づく必要があるからです。ネガティブな感情は「感じてはいけない」という思いから無意識のうちに閉じ込めていることがあります。それをずっと繰り返していると、そもそもいま自分はうれしいのか?悲しいのか?不安なのか?といったことにも鈍感になります。
ちょっとした考え事をしているとき、電車に揺られているとき、待ち合わせしているとき、「いま私はどんな気持ちだろう?」と考えてみてください。
宇野選手のインタビュー内容から、3つの「とらわれない心」について考えてきました。何かを達成しようとするときには、もちろん技術や知識は重要ですが、それ以前にそれらを発揮できる自分になれているか?ということが非常に重要であることを、今回のオリンピックの出場選手たちそれぞれから感じ取りました。
Open Heart Question
あなたの目標を達成して当然のあなたとは、どんなあなたですか?
<引用>
※1、※5:「最後まで自分の演技できた ~宇野昌磨インタビュー~」(NHK SPORTS STORY)
※2:「宇野昌磨「らしさ」健在 記念すべき1日にも冷静」(nikkansports.com)
※3、※4:「愛されキャラ宇野昌磨、天然爆笑会見「保存方法も」」(nikkansports.com)
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