ハリル監督の失敗の本質は嫌われた事ではない

2018.04.12 (木)

 

 

2018年4月9日にサッカー日本代表のハリルホジッチ監督(以下、ハリル監督)が解任されました。ワールドカップの開幕まであと約2カ月という時期での監督交代劇が話題になっている今、本田圭佑選手は自身のツイッターで「It’s never too late.」とつづりました。

 

日本語に訳すと、「遅すぎることはない」。本田選手がどんな意味を込めてツイートしたのかは定かではありませんが、様々な解釈ができると話題になっています。

 

「自らへの不満を公言するようになった選手たちに対して、試合前の会見で一方的に“外部への発信”を制限」「解散前のミーティングで『お前らは裏切るなよ』と言われた」(※1)といったエピソードや、「中心選手であるはずの本田や香川を冷遇した」という報道(※2)は、日本人の多くに「厳しく、好き嫌いの激しいハリル監督が選手から嫌われ、監督を交代させられた」という印象を抱かせます。

 

しかし、この問題の原因はハリル監督が選手から嫌われたという、ハリル監督の人間性に帰結することなのでしょうか。私は、問題の本質はハリル監督が「嫌われるような主張をしたこと」ではなく、「コミュニケーションについてのコミュニケーション」が不足していたことではないかと考えます。また、それはハリル監督だけでなく、日本代表チームをとりまく構造的な問題なのではないでしょうか。

 

私は、「人目気にしいさん専門起業コーチ」として、人から「嫌われたくない」と考えるあまり本来の自分らしくいられない方を対象にしたコーチングを行っています。もしかしたらハリル監督も、人にどう思われるかを気にしすぎてしまう「人目気にしいさん」なのかもしれないと感じました。

 

ハリル監督の自己主張タイプ

 

 

スポーツ報知の記事によると、昨年の11月、ハリル監督は報道陣に対し、「私は日本でどう思われていますか」と逆質問をしたそうです。「要求が高く、厳しいイメージ」などと記者は答えたようです。

 

すると、「私だって、選手を不快にさせたいわけではない。嫌われたいわけでもない。でも、活動期間の短い代表で選手を伸ばすには厳しく言うしかないんだ。日本人は真面目で規律を守る。私は選手たちが大好きだし、誇りに思う。だからこそ厳しい言葉で伝える。友人に本音を言うのは当然だろ?」と続けたといいます。

 

報道陣の前では冗談を言う人柄でも、「選手を前にすると態度は180度変わった。他人の評価を気にするような弱い部分を隠し、必要以上に自分を強く見せようとするため態度は高圧的となった」といいます。

 

記事の中でハリル監督に近い関係者は「監督は1対1だと話を聞いてくれる。ただ、多くの人を前にすると、自分がボスなんだという態度に変わり、どうしても強い言葉になってしまう」と明かしたとされています。(※3)こうした強硬な態度は、自己主張のタイプで言うと「アグレッシブ(=攻撃的な自己主張)」と呼ばれています。ドラえもんでいえば、ジャイアンのように周囲を強い力で従わせようとするタイプです。

 

「自信がない」というと自己主張できずに人に従いすぎてしまうタイプを思い浮かべやすいと思いますが、実はその正反対に見えるアグレッシブな自己主張をする方も、同じように心の奥に「自信のなさ」や「嫌われて孤独になる不安感」を抱えている場合があるのです。

 

アグレッシブな自己主張タイプは、一方的なコミュニケーションとなりやすい傾向があります。もちろん、ハリル監督の主張する内容自体に対しての不満もあったと思います。しかし、その内容以上に伝え方がまずかったことが推察されます。

 

嫌われるのが悪ではない

 

 

もともと人間は、それぞれ考え方が異なっているのが当たり前で、最初から互いに心からの同意をできていることは多くありません。だからこそ、「嫌われないような柔和な意見」を言うことが望まれるているわけではありません。

 

むしろ、意見がぶつかったときにも粘り強く話し合い、どう合意にたどり着けるかが重要です。実は「嫌われる(反発を招く)」こと自体は決して悪いことではなく、むしろ自然な状態なのです。

 

では、ハリル監督の抱えていた問題の本質はなんだったのでしょう。それは、選手との間で「互いのコミュニケーションについてコミュニケーション」できていなかったことではないでしょうか。

 

つまり、「今の自分と相手とのコミュニケーションは上手くいっているのか?上手くいっていないとしたら、何が問題なのか?相手が不満に思っている点は何か?」といった、コミュニケーションについての話し合いをよく行う必要があったということです。

 

これは何も難しいことではなく、ハリル監督が記者に逆質問したような内容(たとえば、「私はチームでどう思われていますか」といった質問)を投げかけ、真摯に受け止める。ただそれだけだったのではないでしょうか。

 

サッカー界に潜むコミュニケーションの構造的な問題

 

 

また、これは監督と選手間だけの問題に留まりません。サッカー協会の中でも、「コミュニケーションについてのコミュニケーション」が不足していたという問題も見逃せません。元プロサッカー選手でサッカー評論家のセルジオ越後さんは次のように話しています。

 

「西野技術委員長(当時)はウクライナ戦の後に継続していくことをバックアップすると言い、それを聞いたハリルホジッチ監督も気持ちが入ったはずだ。その発言を10日あまりでひっくり返す結果だ。会長と技術委員長が話をしていないととらえられておかしくない。もし、会長が解任を考えていたのであれば、バックアップすると口走ってしまった技術委員長は上司に𠮟責されて然るべきことだ」(※4)

 

当事者ではないため、詳しくどんな背景があったかについて知ることはできません。しかし、このコメントから分かる限りではサッカー協会も含めたサッカー界全体として、今一度コミュニケーションのあり方について話し合う必要がありそうです。

 

この構造的な問題がある限り、”性格の悪い”監督が外され、新しい監督が迎え入れられたとしても繰り返しになってしまうのではないかとさえ思えます。

 

 

「It’s never too late.」ーもし多くの物事が「遅すぎるということはない」としたら、もっとハリル監督と選手・協会はじっくり話し合うことは不可能だったのでしょうか。

 

 

Open Heart Question
いま、互いのコミュニケーションについて話し合う必要があるのは誰ですか?

 

 

【参考・引用】

※1「電撃解任の引き金は「暴将」ハリルの暴言」(2018/04/11、東スポWEB)

※2「ハリル監督電撃解任、独誌が見た“失敗”の要因は? 「本田や香川を冷遇したことが…」」(2018/04/10、Football ZONE WEB)

※3「【ハリル解任の真実】「厳しく言うしかない」が「嫌われたくない」指揮官の葛藤」(2018/04/11、スポーツ報知)

※4「セルジオ越後氏、ハリルの電撃解任劇に「協会内がコミュニケーション不足なのでは」」(2018/04/10、SOCCERKING)

 

 

 

「人目気にしいさん起業コーチング」では、「人にどう思われるか気になる」「嫌われたくない」と感じるあまり、本来の自分らしくいられない方を対象に、じっくり自分と向き合う時間を提供しています。のびのびと自分の挑戦したいことに挑戦できる自分になりたい方は、下記フォームよりお問い合わせください。

 

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オンワードミッション川崎 代表/ライフコーチワールド(R)認定ライフコーチ/人目気にしいさん専門起業コーチ 1989年福岡県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部(社会学)卒業後、一部上場の証券会社で営業を経験するも、長時間労働と成績不振で精神的に自分を追いつめ退職。当時の自分を救いたい一心で心理学を勉強するうちにコーチングと出会い、2017年にライフコーチとして起業。現在、スモールビジネス立ち上げ期の自信や覚悟を支えるパーソナルコーチとして活動。半年以上継続したクライアントには、現在全国を回る講演家や経営コンサル等がいる。メディア掲載実績:『PHPスペシャル』2018年4月号・特集「「気にしない」自分になれるヒント」にてインタビュー記事掲載。

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