朝ドラ「半分、青い。」の律のように、本心はうっかりミスに表れる。
新年度から始まったNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」は、高度経済成長が終わる頃の岐阜と東京が舞台。失敗しながらも成長していくヒロインが一大発明をなしとげるまでを描いた作品です。ヒロインが胎児の頃からストーリーが始まる設定の斬新さや、星野源さんの楽曲を使ったオープニングも話題となっています。
先日の放送では印象的なエピソードがありました。ヒロインの幼馴染で、大学受験生である律(佐藤健さん)が、センター試験の直前に受験票の入ったファイルをうっかり取り違えて紛失し、京大を受験できなかったという話です。
後日談で律の父親が、律は模試の結果から京大に受かるのが厳しいことを事前に分かっていたことを明かします。受験票を再発行することもできたのにそうしなかったのは、律が京大合格を(意識的にせよ無意識的にせよ)あきらめていたからだと。
今回の紛失のようなうっかりミスのことを、心理学で「錯誤行為」といいます。そして律の例のように、錯誤行為の裏には自分でも気づかない本心が隠されている場合があります。これをうまく活用すれば、やりたくないことをやっていたり、納得しないままにやっていたりする自分の本心に気付くきっかけにもなります。
無意識が影響する「錯誤行為」
錯誤行為は、ちょっとした言い間違いや聞き間違い、人名や地名等の急なド忘れ、過失による置き忘れ、紛失(今回の律のケースはこれ)といったものを指します。錯誤行為には、無意識に思っていることが表れるといいます。
たとえば、国会の議長が開会を宣言しようとして、誤って「国会の“閉会”を宣言します」と言ってしまった場合。その背景には、「国会なんて早く閉会したい……」という無意識の気持ちがあるかもしれません。
私の友人の例です。ゴールデンウィークの旅行の帰りに飛行機の時間をすっかり勘違いしていて、結局乗ることができなかったそうです。連休最終日のUターンピークだったため他の便に変えることもできず、やむを得ずもう一泊することにしたといいます。普段そんなミスはしないのにと、自分でも驚いていました。これもひょっとすると、無意識の「帰りたくない」という思いが働いた結果の錯誤行為かもしれません。
本心の場所を示す目印として
律の場合、律の両親も話していますが、結果として京大を受験しなくてよかったのかもしれません。なにせ、本心がそうしたくないと言っているのですから。今回、律はヒロインにだけ打ち明けていますが、「周囲の期待に応えなければ」と頑張っていたのです。
このように、行動を起こすモチベーションが周囲からの評価や義務感、強制等であることを外発的動機付けといいます。外発的動機付けによる選択は、自分からやりたいと思うこと(内発的動機付け)よりも続きにくく、どっちみち満足のいく結果は得にくかったと思われます。
外発的な動機で動いている自分に気付くことは、主体的な選択へ方向転換するのに重要なことです。しかし、たとえ内発的な動機で選んだ道であっても、変化することに対して無意識の抵抗が働くことは当然あるので注意が必要です。
人間には現状バイアスという機能があり、変化した後よりも現状の方がよく見えるようになっています。変化しなければ安全・安心。そうして変化を留めることによって、危険から身を守ったり、自尊心を保ったりしているのです。このときは、場合によって現状に留まりたくなる気持ちを振り切る必要があるかもしれません。
錯誤行為に気付いたときには、それは自分が望んでいることなのか、単に失敗や傷を避けたいだけなのかを見極める必要があるでしょう。錯誤行為をヒントに、自分の本心はどこにあるのか?と考えるきっかけにできるとよいのではないでしょうか。
Open Heart Question
あなたが最近したうっかりミスは何ですか?
【引用・参考】
■NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/index.html
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